NECモバイリング40年史
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●10激しく拒絶された“楽に早く仕事をする方式” 「この10年を振り返れば“生産革新”これがすべてですね。昨日までの仕事のやり方を、今日から180度変えてしまう。社員にそういうことを求めたわけです。それから10年にもおよぶ年月をかけて座り仕事を立ち仕事へと変えた。それは効率のよさ、コストの低減、品質の向上を追求するために不可欠なことでした。」 当時、端末修理ラインでは大量の修理品の注文を抱え、修理品の滞留が解消できずにいた。故障個所の解析にも時間がかかり、品質面でも多くの課題を抱えていた。 修理現場ではバラバラの工程で作業が進んでいた。社員一人が10個の修理品を持って作業をし、次の工程に渡す。そこでも同様に10個ずつ作業をする。修理品1台の修理にどのぐらいの時間を要するのか、把握することすら困難だった。 個人に腕の差があった。早い人にはどうしても仕事量のしわ寄せがくる。それを平準化したかった。検討を重ね、今までの考え方にはない生産革新を取り入れ、スムーズな流れができるラインづくりを目指すことを決断した。 「修理品を抱え込んで座って作業をしていたところへ、立って1個ずつ作業をするようにさせました。目標は1日250台と宣言しました。そうすることで1台あたりの作業時間が読めるようになり、大量の修理でもどのくらいかかるかがわかるようになりました。お客さまにも『明日は無理ですが明後日にはお渡しできます』と正確に答えられる。顧客満足度の面でも向上することができるのです。」 予想していたとはいえ、やはり社員から大きな反発があった。社員にはこれまでやってきた仕事のやり方への誇りがあった。 これは“楽に、早く仕事をしよう”という手法なんだと繰り返し言ってもなかなかこだわりが捨てられなかった。立てと言っても立たないし、作業をやらない。毎日がそれとの闘いだった。命じるだけではだめなので、センター長自らが作業ラインに入り、実際に立ち作業をやってみせた。そしてやりやすくなることを一人一人に理解させていった。 重要なのは、出荷のために何をするか、ということだった。いわゆる“職人意識”を捨てることが必要だったのだ。新しい仕事の進め方が染み付いてくると、自然と今度はいい意味でライン間の競争が生じはじめた。向こうは何台修理したから、こちらも負けずにと、モチベーションの向上につながっていった。“なぜ”を突き詰めて即座に改善、おカネをかけずに知恵で勝つ 「どうやって付加価値100%を実現するかをつねに考えてきました。“立っている方が作業効率が上がる”ことを証明するためには、“なぜ”を克服しなければならない。やって見せて納得させる必要がありました。理解が進めば仕事にリズム感が出てくるし、失敗がなくなる。素直に仕事に入れるようになるわけです。管理職がラインに入る、つまり上司の背中を見せて部下を育てるのです。」 最初はトップダウンでも、やがてボトムアップで知恵が出てくるようになった。今ではラインの皆が現場に寄与し、付加価値を上げることを目指している。 また、管理職も自ら作業に加わることで“改善点”を見つけることができる。現場に行って、話してみて、はじモバイルソリューション事業本部カスタマソリューション事業部立ち上がることで見つけた未来、“生産革新”実現までの長い日々豊嶋 好二佐々木 和久

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